植物工場の最新動向関連セミナーのご紹介

一般財団法人 社会開発研究センター 植物工場・農商工専門委員会 理学博士 森 康裕 のセミナーが6月23日に下記要領で開催されました。そのご報告とともに、次回セミナーについても言及しております。

●タイトル

LED植物工場の最新動向と採算性を考慮した運用方法及びトラブル事例・対策

●会 場

東京・御茶ノ水・連合会館(旧 総評会館)+Zoomによるオンライン配信

●講演要旨文

20年の長期にわたり安定稼働、生産を行っている世界初の自動化LED植物工場「コスモファーム」やこれまで登場した植物工場システム(撤退企業含む)で注目された技術をもとに、採算を得られる植物工場に求められる思想と開発・運用のヒントを紹介する。加えて、IoTの活用やスマート農業化の発展に貢献して注目されている代表的なシステムについても、話題の技術について講師の視点から紹介する。また、LED植物工場運用に必要な栽培ノウハウや栽培環境のICT化に重要な項目、ならびに昨今、植物工場ビジネスの行き詰まりの原因となっている生理障害と衛生管理等の各種トラブルの対策についても解説する。

●習得知識

・LEDを用いた植物工場の基本的知識
・植物栽培用LED照明の開発指針
・LED照射下での水耕栽培技術の基礎と実際(野菜の生理障害対策を含む)
・植物工場のICT化で重要な環境制御項目
・採算を得られる植物工場の運営と栽培方法
・福祉分野(身障者の教育プログラムや経済的自立の支援)で植物工場を運用する際のヒントと機能性野菜の栽培方法

●プログラム

1.LED植物工場立ち上げの基礎知識と留意点
 1.1 最近の植物工場の動向と参入前に注意すべき事
 1.2 採算を得られる植物工場の条件:建設、運営方法
 1.3 採算性が高いLED植物工場システムの工夫
 1.4 栽培光源としてのLEDの特徴
 1.5 LED光による植物栽培で理解しておきたい光形態形成
 1.6 植物工場用光源の種類と比較:LED、CCFL、HCFL等
 1.7 植物工場用LED照明設計の基礎
 1.8 植物育成用赤色LED素子の性能比較
 1.9 植物栽培にもっとも注目されている白色LEDと動向
 1.10 植物生育に最適な波長分布を持つ高効率白色LEDの登場
 1.11 植物育成用白色LEDとマクアダム楕円
    ~植物と人間生活に最適な光を両立させる難しさ~

2.LED植物工場内での養液栽培の留意点
 ~植物工場のICT化で重要な栽培パラメーター~
 2.1 養液の調製と管理のポイント
 2.2 LED植物工場に最適な栽培環境と管理方法
   ~光量、温度、湿度、風速、養液温度、溶存酸素、EC、pH、二酸化炭素~
 2.3 LED植物工場内での二酸化炭素の施用方法
 2.4 育苗と栽培工程の注意点
 2.5 代表的な生理障害
 2.6 生理障害の特定と対策方法

3.採算性を考慮した栽培方法と工夫
 ~品種選択方法、機能性野菜~
 3.1 LED植物工場に最適な栽培作物と人気野菜
 3.2 最近注目されている作物の栽培方法
 3.3 香草栽培の事業性と栽培方法
 3.4 注目されているベビーリーフの栽培方法
 3.5 ベビーリーフ栽培と事業性・採算性
 3.6 LED照明を用いた機能性野菜の栽培方法
   ~特定成分の高含量化と低含量化~
 3.7 低カリウム野菜、低硝酸態窒素野菜
 3.8 光合成速度測定を利用した効率の良い栽培方法
 3.9 IoTを活用した自動化LED植物工場の可能性と最新動向

4.収益性が高い自動化LED植物工場
 【コスモファーム・コスモサンファーム他】
 4.1 自動化完全LED植物工場 『コスモサンファーム』
 4.2 世界初の完全制御型LED植物工場 『コスモファーム』
 4.3 コスモファームの照明技術
 4.4 コスモファームの生産工程
 4.5 コスモファームで生産されたレタスの特徴
 4.6 LED照明で栽培されたレタスの栄養成分

5.注目された植物工場システムや技術(撤退、一時生産休止企業含む)
 5.1 液晶TVのバック照明技術を応用した製品
   (スタンレー電気(株)他)
 5.2 福祉分野(身障者の教育プログラムや経済的自立の支援)で活躍するシステム
   (株式会社ハートフルマネジメント他)
 5.3高演色白色LEDを採用した植物工場システムと画期的なアイデア
   ((株)共立電照他)
 5.4 昭和電工(株)の植物工場システムと高速栽培方法「S法(旧SHIGYO法)」

6.植物工場内で多発する各種トラブルと対策方法
 6.1 植物工場内で多発するトラブルの種類と対策方法
 6.2 水耕栽培でも見られる生理障害とその対策
 6.3 植物工場内の多種の細菌、糸状菌類への対策:殺菌、減菌方法
 6.4 LED植物工場内で問題となる資材の消毒方法:塩素系の使用是非など
 6.5 植物工場野菜の完全無農薬の是非:種子由来の農薬の扱い等

7.植物工場技術を応用したビジネス
 7.1 店産店消植物工場
 7.2 『店産店消小型植物工場』を採用したレストランの運営例
 7.3 人気が高い手軽な家庭用栽培装置
 7.4 インテリアへ応用した植物栽培装置
 7.5 花生産への応用の可能性
 7.6 イチゴのウイルスフリー苗生産

8.植物工場の最新動向と今後の展望
 8.1 注目されているイチゴ植物工場の可能性と将来性
8.2 低・脱炭素化への適合
 8.3 ゼロエミッション植物工場
 8.4 全自動植物工場の可能性(播種から収穫まで)

2022年6月23日に新お茶の水・連合会館会議室((株)技術情報センター主催)で「LED植物工場の最新動向と採算性を考慮した運用方法及びトラブル事例・対策」というテーマで6時間(休憩含む)講演を行った。

 主な内容は、20年の長期にわたり安定稼働、生産を行っている世界初の自動化LED植物工場「コスモファーム」やこれまで登場した植物工場システム(撤退企業含む)で注目された技術をもとに、採算を得られる植物工場に求められる思想と開発・運用のヒントである。加えて、IoTの活用やスマート農業化の発展に貢献して注目されている代表的なシステムについても、話題の技術について講師の視点から紹介した。また、LED植物工場運用に必要な栽培ノウハウや栽培環境のICT化に重要な項目、ならびに昨今、植物工場ビジネスの行き詰まりの原因となっている生理障害と衛生管理等の各種トラブルの対策についても解説した。

 今回、対面での講演に加えてZoomによるオンライン配信も同時に行ったため、複数の方に受講いただくことができた。参加者の傾向としては、電機・電子部品メーカーや建設業者といった植物工場に関連する業種や大学講師等の専門家が多かった。

講演を終えた感想として、「脱炭素」「エネルギー問題」を踏まえたゼロ・エミッション型植物工場開発への将来性に対する関心が非常に高いことがわかり、講師側としても参考になる講演であった。

 専門的な話題としては、植物工場の多くで栽培されている葉菜類(フリルレタス)の植物工場ではなく、イチゴの植物工場栽培について注目される受講者が多く質問が非常に多かった。

 次回は、9月15日に(株)情報機構主催で6時間セミナーの開催を予定(https://johokiko.co.jp/seminar_chemical/AC220915.php)しているので、是非、活かしたいと考えている。テーマは、「植物工場ビジネスの最新動向と今後の商機」~ゼロ・エミッション型植物工場/注目高まるイチゴ栽培の実情も~(仮題)である。

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