植物工場の最新動向関連セミナーのご紹介

一般財団法人 社会開発研究センター 植物工場・農商工専門委員会 理学博士 森 康裕 のセミナーが9月16日に下記要領で開催されました。そのご報告をいたします。

●タイトル

植物工場ビジネスの最新動向と今後の商機
~ゼロ・エミッション型植物工場/注目高まるイチゴ栽培の実情も~

●会 場

[東京・京急蒲田]大田区産業プラザ(PiO)6階C会議室

●日 時

2022年9月16日(火) 10:30-16:30

●講師より/本セミナーでの解説事項

 20年の長期にわたり安定稼働、生産を行っている世界初の自動化LED植物工場「コスモファーム」やこれまで登場した植物工場システム(撤退企業含む)で注目された技術をもとに、採算を得られる植物工場に求められる思想と開発・運用のヒントを紹介します。植物工場ビジネスの行き詰まりの原因となっている生理障害と衛生管理等の各種トラブルの対策についても解説します。
また近年の「脱炭素」「エネルギー問題」を踏まえ、ゼロ・エミッション型植物工場への期待も高まっています。その開発上のヒントもお示しします。加えて、今話題のイチゴの植物工場栽培についても、概説します。

●受講して得られる情報は?

・LEDを用いた植物工場の基本的知識と植物栽培用LED照明の開発指針
・LED照射下での水耕栽培技術の基礎と実際(野菜の生理障害対策を含む)
・採算を得られる植物工場の運営と栽培方法
・ゼロ・エミッション型の植物工場を開発する際のヒント
・イチゴ植物工場栽培の現状と可能性

●セミナー内容

1.LED植物工場立ち上げの基礎知識
 1.1 最近の植物工場の動向と参入前に注意すべき事
 1.2 採算を得られる植物工場の条件:建設、運営方法
 1.3 採算性が高いLED植物工場システムの工夫
 1.4 栽培光源としてのLEDの特徴
 1.5 LED光による植物栽培で理解しておきたい光形態形成
 1.6 植物工場用光源の種類と比較:LED、CCFL、HCFL等
 1.7 植物工場用LED照明設計の基礎
 1.8 植物育成用赤色LED素子の性能比較
 1.9 植物栽培に注目されている白色LEDと最新動向
 1.10 植物生育に最適な波長分布を持つ高効率白色LEDの登場
 1.11 植物育成用白色LEDとマクアダム楕円:
    植物と人間生活に最適な光を両立させる難しさ

2.LED植物工場内での養液栽培の基礎
  植物工場のICT化で重要な栽培パラメーター
 2.1 養液の調製と管理のポイント
 2.2 LED植物工場に最適な栽培環境と管理方法:
  光量、温度、湿度、風速、養液温度、溶存酸素、EC、pH、二酸化炭素
 2.3 LED植物工場内での二酸化炭素の施用方法
 2.4 育苗と栽培工程の注意点
 2.5 代表的な生理障害
 2.6 生理障害の特定と対策方法

3.採算性を考慮した栽培:品種選択方法、機能性野菜
 3.1 LED植物工場に最適な栽培作物と人気野菜
 3.2 最近注目されている作物の栽培方法
 3.3 香草栽培の事業性と栽培方法
 3.4 注目されているベビーリーフの栽培方法
 3.5 ベビーリーフ栽培と事業性・採算性
 3.6 LED照明を用いた機能性野菜の栽培方法:
    特定成分の高含量化と低含量化
 3.7 低カリウム野菜、低硝酸態窒素野菜
 3.8 光合成速度測定を利用した効率の良い栽培方法

4.収益性が高い自動化LED植物工場 【コスモファーム・コスモサンファーム他】
 4.1 自動化完全LED植物工場 『コスモサンファーム』
 4.2 世界初の完全制御型LED植物工場 『コスモファーム』
 4.3 コスモファームの照明技術
 4.4 コスモファームの生産工程
 4.5 コスモファームで生産されたレタスの特徴
 4.6 LED照明で栽培されたレタスの栄養成分

5.注目された植物工場システムや技術(撤退、一時生産休止企業含む)
 5.1 液晶TVのバック照明技術を応用した製品(スタンレー電気(株)他)
 5.2 福祉分野(身障者の教育プログラムや経済的自立の支援)で活躍するシステム
   (株式会社ハートフルマネジメント他)
 5.3高演色白色LEDを採用した植物工場システムと画期的なアイデア
   ((株)共立電照他)
 5.4 昭和電工(株)の植物工場システムと高速栽培方法「S法(旧SHIGYO法)」
 
6.植物工場内で多発する各種トラブルと対策方法
 6.1 植物工場内で多発するトラブルの種類と対策方法
 6.2 水耕栽培でも見られる生理障害とその対策
 6.3 植物工場内の多種の細菌、糸状菌類への対策:殺菌、減菌方法
 6.4 LED植物工場内で問題となる資材の消毒方法:塩素系の使用是非など
 6.5 植物工場野菜の完全無農薬の是非:種子由来の農薬の扱い等

7.植物工場技術を応用した関連ビジネス
 7.1 注目される店産店消植物工場とそれを採用したレストランの運営例
 7.2 人気が高い手軽な家庭用栽培装置
 7.3 インテリアへ応用した植物栽培装置
 7.4 花生産への応用の可能性

8.植物工場でのイチゴ栽培の現状と将来性
 8.1 イチゴのウイルスフリー苗生産
 8.2 今話題の種子繁殖型品種「よつぼし」他:注目される理由と実情
 8.3 一季成り性品種の王道「あまおう」「紅ほっぺ、きらぴ香」の栽培の可能性:採算性・課題

9. 植物工場の定義とゼロ・エミッション型への可能性
 9.1 植物工場用電源の低・脱炭素化(植物工場を稼働させる電力)
 9.2 ゼロ・エミッションに向けた植物工場システム販売企業の動向
 9.3 ゼロ・エミッションを見据えた電力の動向

10. その他の植物工場トピックス
 10.1超大型植物工場か超小型植物工場か:規模の二極化
 10.2 IoTを活用した自動化LED植物工場の可能性と最新動向
 10.3 全自動植物工場の可能性(播種から収穫まで)
<質疑応答>

●講演内容とレポート

2022年9月15日に[東京・京急蒲田]大田区産業プラザ(株式会社 情報機構主催)で、
「植物工場ビジネスの最新動向と今後の商機」~ゼロ・エミッション型植物工場/注目高まるイチゴ栽培の実情も~
というテーマで、6時間(休憩含む)講演を行った。

 主な内容は、植物工場の多くで栽培されている葉菜類(フリルレタス)の植物工場ではなく、最近、植物工場の栽培作物として注目され、積極的に試験栽培されているイチゴ植物工場の可能性や採算性、最適なイチゴ品種についてである。加えて、IoTの活用やスマート農業化の発展に貢献して注目されている代表的なシステムとゼロ・エミッション型の植物工場やSDGsをテーマとして、自然エネルギーを活用した最新の植物工場技術のご紹介をした。

 また、これから植物工場事業を始める方向けの内容として、LED植物工場運用に必要な栽培ノウハウや栽培環境のICT化に重要な項目、ならびに昨今、植物工場ビジネスの行き詰まりの原因となっている生理障害と衛生管理等の各種トラブルの対策について解説した。

 今回、対面での講演であったことと、新型コロナウイルス感染症が拡大している状況だったため、受講者が少なかったが、参加者の傾向としては、電機・電子部品メーカーや実際に植物工場を運営している専門家が多かった。

 講演を終えた感想として、イチゴ植物工場の将来性や植物工場内での詳細なイチゴの栽培工程に対する関心が非常に高いことがわかり、講師側としても参考になる講演であった。加えて、業種を問わずゼロ・エミッション型の植物工場の技術である培養液等の排液を出さない資源循環型の植物工場に関する問い合わせが多かった。ゼロ・エミッション型の植物工場については、次回の講演で、是非、活かしたいと考えている。