会長メッセージ
(財)社会開発研究センターの歴史は、その前身である(財)社会開発総合研究所(以下社総研)が設立された1973年に遡ります。当時日本は「世界の奇跡」とまで称えられた戦後経済の高度成長を一応達成し終えていたとはいえ、経済先進国としてのさまざまな国際的役割を果たしていくためには、その役割を積極的に果たすことを妨げる“社会的後進”ないし“社会的不適応”の諸問題を国内的に多く抱えておりました。政・官・財各機関の求めに応じてこれらの諸問題の本質を明らかにするとともに問題解決への方法なり示唆を具体的に提示すること、それこそがシンクタンクとしての社総研設立の基本的目的でした。
設立以来約30年、この間の経済社会の変容に応じて、社総研の活動内容は、当然のことながら時代の激しい変化を反映しております。例えば設立直後は、嵐のようにわが国を吹き荒れた「日本列島改造」ブーム後の国土計画の見直しや、石油危機の勃発による日本的生産活動や消費生活のあり方に焦点が置かれました。 80年代には、“円高”の常態化に象徴される日本経済の世界経済の中での位置づけの急変、それに伴う狂乱のバブル景気による伝統的“日本型システム”の崩壊への対応がクローズアップされました。そして90年代から今日にかけては、長期的な経済的低迷・政治的激変・社会的退廃という苦い国民的経験を踏まえ、 “新生日本の模索”が主要な関心事となった…といったことが回顧されます。
とくに世紀の変わり目の時期、「(国家的政策課題であった)首都機能移転」とか「(地方公共団体単位の)地域起こし・街づくり」に関し、社総研は調査・研究・提案活動を活発に行いながら、2002年には設立目的をほぼ同じくする地域指向のシンクタンク(財)宮城総合研究所と合併し、「社会開発研究センター」という名称のもとに新発足しました。ただし、ちょうどその頃首都機能移転の問題はすでにあらゆる検討段階を終えた後政策課題としての比重を急速に低下させており、また地域起こし・街づくりに関しては、中央ならびに地方の余りにも多くの研究調査機関が競って関わりを持つ新事態が生じておりました。
したがって2006年度以降本センターは、変化する時代が生み出す幾つかの行政的課題と臨機応変に取り組まざるをえない企業活動のために役立つ調査研究ならびにコンサルティング機関としての道を歩み始めました。以来当センターの活動の焦点は、高齢化の進展過程における新産業としての「シニア・ビジネス」に置かれてきましたが、2009年度以降本センターは今一つの活動の焦点を「植物(野菜)工場」と定め、この分野の専門家である高辻正基氏を理事に迎えました。「植物(野菜)工場」は、08年の閣議決定を踏まえ、地域活性化を目指す有力な具体的戦略として経済産業省・農林水産省両省が設置した「農商工連携研究会」が「植物工場WG」(座長:高辻正基氏)を発足させたことを契機として、俄然産業界各社の注目を集めております。何とぞこの問題に直接的または間接的に関係のある各社は、当研究センターの活動に関心を寄せられますよう謹んでお願い申し上げる次第であります。
会長 野田一夫